主人公の和泉時雄(いずみ ときお)は、成り上がり華族の跡取り息子。
幼い頃に拾われ、妹として育った結衣(ゆい)と共に、屋敷で暮らしていた。
母親は早くになくなり、父親は世界中を飛び回り家に寄りつかない。
そんな中で時雄と結衣は、本当の兄妹以上に仲良く、そして家族の絆を深めていた。
しかしある日、隠されていた屋敷の地下室で怪しい棺を見つけた時雄は、結衣が止めるのも聞かず、好奇心から蓋を開けてしまう。
──果たして、中にはなにも入っていなかった。
がっかりする時雄と、ほっとする結衣。
ところが、事件はすでにこの時から始まっていたのである……
その夜、テラスで結衣の姿を見かけた時雄は、そこで信じられない光景を目にすることになる。
時雄の方に振り向いた結衣の目は紅く、紅く光っていた。
そして次の瞬間、結衣の髪は美しい金髪へと代わり、口元には鋭い犬歯が覗く。
エル「この身体はもはや妾のものじゃ」
吸血姫エル──そう名乗った少女は妖しく微笑むと、時雄の血を吸い始める。
血を吸われるけだるさと共にしんじられないほどの快楽を感じながら、時雄の意識は遠のいていくのだった……。
昼はしとやかで可愛い妹。
夜は高貴で生意気な吸血姫。
二つの人格を持つ少女との生活は、この日から始まったのである。